欲張りな3つのお願い
前章では、本筋の話と関わりない、広告賞の話を交えてしまったために、ちょっとわかりにくくなってしまったかも知れません。
そこで、前回のまとめから始めましょう。
前章の要点は、女性にモノを気に入ってもらって買うかどうかを検討してもらうために必要なコミュニケーションは、なかなかシンプルにいかない、実は3つのポイントをすべて抑えていないといけない、女の子は欲張りね、でした。もう少し具体的には、
- かわいい、あるいは、かっこいい、素敵、などと思ってもらうことは、必須。
- 加えて、「それが私に具体的に何をしてくれるのか、簡単だけど納得のいく説明」をしなければならない。これも必須。
- しかも、「それが私の生活にどんな素敵な結果をもたらしてくれる可能性があるのか」に思いをはせてもらわなければならない。これも必須。
この3つ、すべてがバランスよくそろって、初めて彼女の心は前に動いてくれる。
欲張りな3つのお願い
ということです。
欲張りな3つのお願い
この欲張りな3つのお願い、もう少し覚えやすく解説すると、女性を動かして財布のひもをゆるめてもらうためのコミュニケーションは、「Senses(感覚)」と「Mind(頭)」と「Heart(心)」に響かないといけない、ということです。
「Senses(感覚)」とは、例えば、かわいい・かっこいい・おいしそう・気持ちよさそう、など、感覚的な要素です。その製品やサービスそのものの機能とは無関係なことも多く、CMだったりパッケージだったり、中味の色や手触りだったり、ハガキの紙質だったり、男性ナレータの声質だったり。
「Mind(頭)」は、そのままですが、頭で理解される論理的情報ということで、具体的な機能として何をしてくれるのかなどの要素ですね。ただし、論理的要素、といっても、別に論理的整合性のある正しい情報、という意味ではなく、機能的便益と呼ばれるものや保証・推奨などを含む「頭でわかる」情報だと思ってください。
「Heart(心)」は、気持ちで受け止める・判断する情報のことで、マーケティングで「情緒的便益」なんていう情緒もへったくれもない呼び名で呼んだりするものはこれに属します。私は「生活や気持ちにおよぼす影響」というくらいの感じでとらえていますが。それほど大仰なものではなく、「私の生活にどんないいことが起こる(かもしれない)の?」みたいなことです。
(あれ?「Soul(魂)」は?とおっしゃる方がいるかも知れませんが、Soulの話をすると長くなるので、ここでは触れずに進めます。詳しくは「極意のフレームワーク」を。)
もうひとつ、大事なポイント。「Senses(感覚)」と「Mind(頭)」と「Heart(心)」に響かないといけない、の「響く」というところです。
説明したり説得したり、という、ハードなものだけが要求されているわけではないことが多く、むしろそうしようとすると「よくわかんない」と心を閉ざされてしまったりする。また、良かれと思ってしっかり見せると、「なんかこわい」とか「うそっぽい」とか言われてしまうことも。
「響く」ことが大事なんです。そのために、しっかりとした説明が必要なときに限って、ちゃんと説明する。
まぁ、そんな小難しい話ではなく、
「この歯ブラシ、なんか、気持ちよさそうな色と形だね。へぇ、すごく歯垢が落ちるんだって、歯医者さんがいいって言ってるみたい。検診でどきどきしなくて済むかも、って?いいじゃん」
とか、そういうレベルの話なんですが、この内容とバランスのとり方が案外難しく、「いい塩梅」を見つけるためには、そのカテゴリの経験と、あとはともかく相手の女の子のことをよく知る以外ないのが難点、もとい、マーケティングのおもしろいところです。
さて、次はこのシリーズの最終章、「良いいいわけをあげよう」です。