いいわけ
最後は「いいわけ」について書きます。
うまく、彼女がいいわけできるように助けてあげると買ってもらえる確率があがりますよ、というお話。
でも、いきなり結論とかHow‐toとかに行く前に、少し寄り道しましょう。
よく恋愛などの心理(学)ネタとして語られることですが、一般に男性は一点豪華主義で女性は平均点主義ということが言われます。(これが恋愛ネタだと、「だから男女はそこですれ違うのよ!」とか、「だからオンナを・オトコを磨くときに、磨く場所を間違えるのよねぇ」という話になるわけですが、ここはあくまでマーケティングの話。)
男性は、自分が好きな・気にしている・こだわっているポイントが優れている(らしい)モノを好み、それ以外の部分に目が行かない、あまり気にしない、場合によっては、他ができない・良くないことをむしろポジティヴに考えてしまうことがあるくらいだと言われています。
一方、女性は、重要視するポイントを見ながらも、他の複数のポイントも評価し、できない・良くないポイントがない・少ないことをチェックし、平均して優れているものを好む傾向にあると言われています。
もちろん、あくまでも一般論だし、傾向の話ですが。
「いいわけ」を用意してあげる
これを前回まででお話しした「Senses(感覚)」と「Mind(頭)」と「Heart(心)」の話とくっつけてみます。実はもちろん男性もSensesとMindとHeartを動かされたモノを買うのですが、それは「ひとつのポイント」についてのSensesとMindとHeartなのに対して、女性の場合、3つ(以上)の評価ポイントの平均的な良さを見る、ということにつながります。
以前あげた例で話をすると、かっこいいデザイン(Senses)に食指が動いたとします。
男性の場合は、有名なデザイナーなのか(Mind)、そのデザインの狙いやストーリーは何なのか(Mind)、どのような工夫をして色を出しているのか(Mind)、それを使っている自分はどれほどかっこよく見られるか(Heart)、などの情報を欲しがります。
一方、女性は、かっこいいデザイン(Senses)に食指が動くと、はたしてそれは見た目だけでなく十分な機能を持っているか(Mind)、価格はばかみたいな値段ではないか(Mind)、誰か有名人や雑誌などがおすすめしているか(Mind)、自分や他人の生活・気持ちにいい影響を与えるか(Heart)、などをチェックします。
つまり、女の子に、気持ちよくモノを買ってもらうためには、その心を動かす特徴(SensesかHeartかMind)だけではなく、それ以外の2つのポイントに、他人に「どうしてそんなものを買ったの?」と聞かれても「平均的に損な買い物ではない」と説明できる「いいわけ」を与えてあげなければならない、ということです。
もうひとつ例を挙げましょう。
いわゆる「限定モノ」。これは男女問わず無敵のいいわけですが。
女の子の場合、きっと、本当はかわいいから欲しかったんですね。ちょっと値段が高いなど、自分にはいくぶん背伸びかな?と思っていたり、でも憧れていて、彼女の「Senses」はものすごく欲しがっていたわけです。でも、いいわけが必要。「だって、これ限定モノなんだよ」は、Mind的いいわけとして無敵なんですね。
男性の場合、「限定モノだってよ」だけでは終わりません。シリアルナンバーが打ってある、とか、何年モデルの復刻版だとか、オークションでいくらで取引されているか、などなど、「限定モノ」の素晴らしさの一点豪華主義。
誰しも、食べ物は「おいしそう!」(Senses)だから欲しいと思うんですが、女性にとっては、「たっぷり(レタスX個分の)繊維が入ってるし」(Mind)、「なんとなくお肌がきれいになるかも」(Heart)があるから「買っちゃってもいいよね」ということになる。
「きれいになりたい!」(Heart)から新しい化粧品が欲しいのですが、実は頭の中では、「結局効かないかもしれない」ことはわかっていて、「なんでそんなの買ったの?」って言われたときのために、Mindに訴える情報、「最近話題のXYZ成分が入ってるらしい」とか「雑誌で賞をとっていた」とか「(少なくとも)くすみに効くって書いてある」とかが必要なわけです。そのうえ、パッケージや広告がかわいい(Senses)のも必須。ようやく買っていただける。
(長くなるのでここでストップしますが、世の中で「差別化」と呼ばれている、マーケティングの世界ではあたかもそれが一番大事だと言われていることの多くは、実は「いいわけ」に過ぎないんですね。)
女の子に気持ちよくお金をはらってもらってモノを買ってもらおうと思うなら、彼女が好きなポイントだけが良くてもだめです。平均点的に考えても、問題のない買い物であることがわかりやすいこと。なおかつ、誰かに「どうしてそんなものを買ったの?」と聞かれても、
「だってXXXだから」ってちゃんと言える「いいわけ」
を用意してあげましょう。