
「まず心を動かす」
=マーケティングの鉄則、
だと思うんですが。
考えさせるより前に、まず心を動かす
私としては、もうかれこれ30年、これが鉄則だと思って仕事しているんですが、どうやら世の中そうでもないような気がしています。
私は、ビジネス書やマーケティングの教科書などを一切読まないので、そういったところにどのように書かれているのか、ちゃんとわかってないんですが、もしかするとそのようには書いていないんでしょうか?日々、いろいろな仕事をしていく中で、どうもこれを鉄則だと認識している方(マーケティング担当者)にあまり会わないので、もしかしたら、と。
マーケティングの仕事って、理屈をこねくり回すことが多いし、数字もよく出てくるし、戦略とか分析とかも、大抵は(ちょっと難しげな)言葉で書かれていることが多い。インサイトなど、ひとの感情や感覚に直接関わることであっても、文章で表現されることが常なので、ついつい「理屈」に偏る。
確かにデザインや広告などの仕事になると、理屈ではないはずなんですが、それらを議論するときには、(わかったような・へ)理屈が幅を利かせる(か、逆に「感性」とかいう、よくわからないものに議論を阻まれたり・・・)。
仕方ないといえば、そうなんでしょう。マーケティングで最も大きなボリュームを占める仕事は、「論理的に考え、整理し、組み立てなおすことでリスクを最小限にしていくこと」なので、どうしても、(時間的に・スペース的に)理屈が多くなる。(しかも、難しそうな言葉、専門用語で語ると、たいしたことない内容のプランでも賢そうに聞こえるしね~。)
でも、マーケティングの相手は人間
なので、感覚(いわゆる五感)で感じ、感情で動く。
一見、理屈・論理で動いているように見えたとしても。調査などで、聞けば(言い訳も含め)論理的に答えるとしても。
てことは、マーケティングコミュニケーションによって、ターゲットの意識や行動を変化させようとするのなら、感覚と感情に作用するものでない限り、うまく働かない、つまり、「心を動かさないと」ひとは変わらないということです。
より詳しくは、こちら、「極意のフレームワーク」で論じていますが、ここではごく簡単に、頭と心で解説してみます。理屈が「頭」で、感情と感覚が「心」です。
あなたがサルだったころ
まず、あなたがまだサルだったころを思い出してください。
毎朝行っている水飲み場、木から見下ろしたとき、いつものように小鳥のさえずりが聞こえ、木漏れ日が水面を輝かせています。
とても穏やかで気持ちいい。それは、まずあなたの感覚によって感じ取られ、「あ~、穏やかな朝だなぁ、今日もいい天気だなぁ」という感情を生み出します。
すると、あなたの心は、頭に「大丈夫、休んでていいよ」と命じます。
ところが、別の朝、いつもの水飲み場、なんだか雰囲気が違います。どこがどう違うのか、考える前に、あなたの感覚は「あれ?」と感じ、「何か変な気がする」という感情を生み出します。
すると、あなたの心が、頭に命じます。
「おかしい、分析せよ。」
頭がフル回転し始めます。
どこか変なところはないか。 あの物陰に猛獣が潜んでいないか。水は濁っていないか。 そういえば、いつもの鳥のさえずりが聞こえない。鳥がいない・鳴かないということは、危険のサインかも知れない、気をつけよう。
つまり、頭は「分析・比較・批判・合理的判断」が仕事なんですね。重箱の隅をつつくのが、頭の仕事。文句をつけるのが頭の仕事。やめといたほうがいい、というのが、頭の仕事なわけです。
今やあなたは人間ですが、頭と心の役割はサルのころと大きく変わりません。
やはり、第一印象(あるいは印象を形成する以前の状態)で、行動の大筋を決めているわけです。
なので、モノやサービスを買ってもらおうとするならば、まず、最初に心に「そうしたい」と感じさせることで、頭にあまりがんばって働いてもらわないようにする、少なくとも、心が「好きなんだから、いいところを探してね」と頭に命じるようにすべきなわけです。
もちろん、頭を全く働かせずに「購買」させればいいかというと、実はそんなことはなく、それはそれで大事なんですが(じゃないと、返品とかクレームとかネガティヴな口コミとかにつながります)、優先順位は、圧倒的に心ですよ、という話です。
そもそも見てもらえるか?
さらに、マーケティングコミュニケーションのもうひとつの大きなハードルも心に関係します。それは、「そもそも見てもらえるか」です。
どんなに伝えたいこと、伝えるべきこと、伝えればよろこんでもらえるに違いないことがあっても、見ても・聞いてももらえなければ、それは「単なる無駄」ですから。(お金持ちの方は、見ないわけにいかない量のメディアを買えばいいわけですが、それでも「嫌い、見たくない」と言われれば終了ですし。)
でも、あなたの心、特に感覚は、とても優秀です。
道行く人ごみの中から、瞬時にかわいい・かっこいいひとを見つけ出すことができます。
クローバーだらけの土手で、四つ葉のクローバーを、あたかも浮かび上がってくるかのように発見することができます。
交じり合ったニオイの中から、好きな食べ物の香りをかぎ分け、「なんとなくおなかがすいた」とか「久しぶりにあれを食べたい」とか感じることができます。
ノイズキャンセラーが無くても、雑音の中でも、好きな音楽の、好きな楽器の音や、好きなアーティストの声だけを聴くことができます。
マーケティングコミュニケーションでも同じ。 広告・情報だらけの画面やスクリーンや店頭の中から、あなたのターゲットが見つけてくれる、気になってついつい見てしまうものは、彼・彼女の「心に響いているから」です。
「まず心を動かす」=マーケティングの鉄則
この「鉄則」、実は、販売業や営業・接客などに従事されている方のほうがよく知ってらっしゃいます。
やはり、生身の人間に接するからでしょうか。
でも、マーケティングも、メディアを介しているだけで、その先にいるのは、生身の人間ですから、同じだと思います。
調査し、分析し、目的や戦略を決め、リスクや損益を熟慮し、一生懸命、餅の絵を描いたら、その先は、「まずは心を動かせているか?」を考えるようにするといいと思います。
そして、あなたの近くにいる「クリエーター」と呼ばれる方々と話してください。彼らは、それがとっても得意ですから。