「スマホのせいで売れなくなった」は本当か?
少し前のことになりますが、チョコフレークの販売中止の発表の際、その理由として「スマホのせいで売れなくなったから」と報道されていました。
広報さん、本当にそうおっしゃったんでしょうか。
「なるほど、確かに手が汚れるしね、そうなのかも…」と思う人も少なからずいらっしゃるんでしょう。ニュースになるくらいですから。たぶん。
(あるいは、ただ調子悪くて、あるいは他の(社内の)理由や事情があって販売中止にしただけで、「スマホのせいで」は、ウケ狙いだったのかも知れません。きっと、そうだ。ちょっと調べてみよう!)
さて、「スマホのせいで」売れない、市場が縮小した、という業界、カテゴリー、商品は多々あり、実際クライアントさんからも時々お聞きします。
その中には本当にスマホのせいで売れなくなったもの、スマホのせいだとみんな思っているけど本当は違うもの、そして本当は違うってわかっているのにスマホのせいにしておけば楽だからそうしておくもの、があります。
スマホによく似た例としては、ECの普及、少子化、高齢化、働く女性の増加などがよく耳にするところです。社会環境の変化に伴って、消費者のニーズも変わり、どうしても世の中の流れに合わない商品やサービスが発生してしまうということですね。
販売チャネルや情報経路の変化、生活スタイルの変化によって、小売店一般、各種メーカー、サービス業…、要はみんな多かれ少なかれ影響を受けています。そして今後も世の中は変化し続けます。
ですので、ビジネスがうまくいかない時、それを世の中の変化のせいにすることはたやすく、またそれはとても優れた「言い訳」になります。周りの納得、同情、共感が得やすく、自分たちは頑張っているのに「世の中のせいで仕方ないよね、俺たちのせいじゃないよね」と主張できるからです。
でもそれでは思考停止です。残念ですが、仕事になっていません。
まず声高にお伝えしたいことがあります。
すぐに世の中の変化のせいにしない、そして安易にほかの策に逃げない、ということで
例えばわかりやすく教育産業で考えてみましょう。
業績がじわじわ減っているときに、「少子化だから仕方ない」と思った時点で負け試合が確定します。
少子化なんだから、教育産業なんて影響受けるに決まっています。そこで「少子化だから仕方ない」とすれば、リストラや経費削減をして、売上縮小の中でやりくりし、試合終了を待つのみです。
いや、むしろ、子どもが減っている分、単価が上がっている・上がる可能性もあるかも知れません。そうなれば、チャンスなのかも?
誰も投資しないカテゴリーになったときにNo.1シェアを持っていると、とっても儲かるようになることが少なくないので、早いうちにシェアを上げられるだけ上げる努力をすべきなのかも知れません。
しかし、ここでよくあるのが、「新規事業だ!教育アプリを作るぞ!」という、よく知らないくせに、新たな社会トレンドに乗ろうとするパターン。もしくは、「中国に行けば子どもがいっぱいいる!」という、青く見える隣の庭を焼きに行こうとするパターンです
でも考えてみてください。
本当に今やっているビジネスにチャンスはないのでしょうか。
昔はできていたのに、今はできていない社内の勝ちパターンはありませんか?
伸びていないのは自分の会社だけで、実は同じ業界でも伸びているところはありませんか?
社内でも伸びているものと伸びていないもの、ありませんか?
売上が落ちているときに知らないといけないのは、本当の原因です。多くは社内に潜んでいます。その次に店頭に潜んでいます。その次に消費者あるいは製品やサービスそのものに潜んでいます。それらすべてに原因が無かった時、最後に考えるのが世の中の変化です。
(世の中の変化がビジネスやブランドに目に見える大きな影響を与えるのは、劇的かつ不可逆的な変化が短期間で起きたときくらいです。)
また、目指すべきビジネスの伸長は大抵の場合、現状+5~10%というレベルであり、現在のシェアが寡占状態でなければ、仮に市場が縮小していても伸びしろは十分あるはず。
誤解のないよう確認ですが、実際に世の中の変化によって淘汰されていく商品やサービス、会社があることは事実です。ただ、それほど多くはないですよ、ということ。少なくとも、かなりの猶予があるはずです。まずはきちんと、本当の理由・原因・問題・課題を考えてみましょう。
さてさて、チョコフレークですが、過去5年で売上が半減だったそうですね。それはひどい。
この5年と言えば確かにスマホが普及完了するまでの期間と一致します。
もしスマホが原因とするならば、
①スマホがお菓子を代替する娯楽・癒し・くつろぎを与えており、お菓子自体の摂食が減っている、
②食べながら(もしくは食べた後に)スマホを触りたいので、手が汚れないものが好まれ、チョコフレークは除外された、
の2パターンでしょうか、ニュースとしては②の理由が伝えられています。
ただし、その場合、チョコフレークをはじめとする「手が汚れてスマホを汚す」スナック菓子、ポテチなども含めて全般の売上が減少している、市場規模も小さくなっているはずです。
…ちょっとだけデータ見てみましたが、やっぱり市場は小さくなっていませんね~。主だったメーカーさん、堅調のようです。で、唯一の競合、某社のチョコフレーク、ここしばらく2桁成長だそうです。あらあら…。
これほどのロングセラー商品が急に5年で半減、っていうのはなかなかないので、工場閉鎖ありきの結論だった(冒頭の、「スマホのせいにしておく」パターンですね)、もしくはスマホ以外の何らかの事情をきっかけにダウンスパイラルに入ってしまったか、といったところかと推測します。(全然違ったらごめんなさい。)
ちなみに弊社、「原因がよく分からないビジネスの不調」の原因を発見するの、とっても得意なので、世の中のせいにされている方、ぜひご相談ください。
(チョコフレーク再生プロジェクト、やりたかったなあ。大好きな商品なので、とても残念です。)
なお、「いろいろ調査や分析をやってみたけど、結局世の中のせいでした」というケースは今のところほぼありません。ただ、まれにありますので、その場合はご相談時にお断りするか、早々にその旨はっきりお伝えいたしますのでご安心を。