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株式会社えとじや

マーケティングなんでも相談所

Creativity=サプライズギフトを贈る力 1.スキルとしてのクリティビティ
SKILL
Creativity=サプライズギフトを贈る力

1.スキルとしてのクリティビティ

文 岡本晋介・写真 中村年孝

 マーケティングにおけるクリエイティビティとは、「サプライズギフトを贈る力」なんじゃないか。
 恋人のことを思い浮かべてもらってもいいし、パートナーのことを想定してもらってもいいし、大切な友達でも。
 そのひとの、例えば誕生日や、記念日や、大切な日に、「あ~~~、びっくりした、うれしい、ありがとう!」と言ってもらえる、そういう贈り物。
 何を、どういうタイミングで、どんなシチュエーションで渡すのがいいか。
 決して、送る側の独りよがりや、単なるびっくりだけではなく、相手のうれしい驚きの顔を見たくて。
 そういうのを考え、悩み、セットアップをして、ここぞというタイミングで渡す。
 それを、思いつき、やってのけるちから、それがクリエイティビティ(創造力)なんじゃないか。
 クリエイティビティ、少なくともマーケティングの仕事においてのそれを、こう考えてみると、いろいろと「なるほど~」だなぁ、と思います。
 では、その、イノベーションを生み出す力、クリエイティビティをどう規定・定義すればいいのか?
 創造力・クリエイティビティ=天賦の才、である可能性は低くないんですが、そうしてしまうと、私を含む凡人には手の届かないものになってしまって寂しいので、そうではない・それ以外の、「習得可能なスキルとしての創造力・クリエイティビティ」として考えたとき、結局のところ、それは以下のようなことなんじゃないでしょうか。

A.まず、既知あるいは既存のモノに、新しい見方や考え方を与えること。

 特に、古いモノ、古くて忘れ去られてしまっているようなモノやコトに、今までと違う視点や時限・次元から見た・考えたときの見え方や考え方を提示できたとき、大抵のひとはそれを「新しい」と言います。70年代のファッションが流行ったり、80年代の音楽が見直されたりするのは、実はこれですよね。
 見直す=立派なクリエイティビティです。
 ビジネスに存在している、「あたりまえ」とか「それ、昔やった」とか「いまどきそれはないよ」とか、あえてそういうものを見つけてきて、斜めから見たりひっくり返してみたり。えてして、制限が多い・自由度が低い、「これが入ってないとだめ」とか「これはやっちゃだめ」というのが多いときほどクリエイティビティが発揮されやすいのは、この「見方を変えてみると新しい」と関係が深いのだと思います。
 「あたりまえ」、「昔やったこと・終わったこと」、「いまどきやらないよね」、「あのときはうまくいったけど」…。
 マーケターが、自分の周りにそういうのを見つけたら、チャンスです、食いついてみましょう。
 本当にうれしいサプライズギフトは、とても多くの場合、昔、欲しいと誰かと話したことがあって、でもあきらめていたり忘れてしまっていたりしたもの。もしかすると、昔、一度もらったことのある、思い出深い、でも、忘れていたもの。
 それを、あなたが知っていた・覚えていてくれたからうれしい、みたいな。

B.2つ以上の、既知・既存のモノを組み合わせること

B.さらに進んで考えると、2つ以上の、既知・既存のモノを組み合わせることで、それまでと違ったモノに変化するのは、まさに「クリエイティビティ」。
 これはあちこちで言われていますが、実は、世の中にある、ほとんどのイノベーションは、ここから出ている。
 手のひらにのる、電池で動く大容量ハードディスクと、ウォークマンと、携帯電話と、モニターにタッチペンや指で操作できるコンピュータ端末をシェイカーにぶち込んで振ったら、当たり前のように「iPod/iPhone/iPad」が出てきますよね。
 もちろん、それを妄想する力と、それを実現するための力は必要です(これらは2に書きます)。ただ、「スキルとしてのクリエイティビティ」として限定的に考えれば、結局、そういうことなんではないでしょうか?
 つまり、「創造力・クリエイティビティ」といっても、「それまでにない、全く新しいものを思いつく」必要はないんじゃないかなぁ、と。
 しばしばスティーヴ・ジョブス氏が「稀代の盗人」と揶揄されるのは、まさにこういうことを指しているんだろうと思います。
 何もないところから(突然)思いつくことがクリエイティビティなのではない。
 組み合わせを生み出せばいいんですよね。
 きゃ~、ってうれしがってくれる贈り物、は、実は「全く新しいもの」ではないんですよね。見たこともないモノを渡すと「なにこれ?」と戸惑いますから。
 でも、そのへんで手に入るモノがそのままでは、驚かない。
 だからラッピングを工夫したり、いくつかのモノを組み合わせて、あたかもそれらを使う生活のシチュエーションをプレゼントしているかのようにしたりする。
 そして、さらに「おおおおお~」って言ってもらうために、渡し方とか考えますよね。
 それがこの次。

C.ちょっとした「編集」

C.単に組み合わせただけ、で終わらせない「コツ」ってあるのか、と、考えてみたんですが、もしかすると、そこにはちょっとした「編集」があるのかも知れない。
 モノとモノを組み合わせるのは、簡単で、だからこそ誰でも思いつく、小さなクリエイティビティにしかならないかも。
 でも、モノとコト、モノとヒト、ヒトとトキ、コトとトコロ、など、ヒト・モノ・トキ・トコロを組み合わせると、たとえそれらひとつひとつが「当たり前」でも、組み合わせてできたものは、結構「新しい」のではないか。
 その「組み合わせ」を思いつく、あるいは、面倒がらずにあれこれ試す、のが、まさに創造力なんではないかなと思ってみたりしたわけです。
 思考や思想、着想などを組み立てる・組み上げるという意味での「編集」という言葉が、「新しいものや見方・考え方を生み出すもの」として議論されますが、それはこれのことですね、きっと。クリエイティビティって、編集なんですわ。
 もらった相手がびっくりしながらも、すごい喜んでくれるプレゼント。
 それは、おそらく「見たこともない新しいモノ」ではない。
 必ず何かの、誰かの、どこかの、「真似」です。
 でも、そのチョイスにセンスや思いがあったり、タイミングや組み合わせ、ときに贈るひととプレゼントの組み合わせが絶妙だったり、ずっと昔に欲しかった・好きだったけど忘れてしまっていたものだったり、渡すシチュエーションやラッピングやカードなどがうまく編集されてたり。
 クリエイティビティって言うと、なんだか難しそうなので、こんな風に考えてみるとわかりやすいのかな、と。
 どうでしょうかね?
 さて、この「サプライズギフトを贈る力」たとえ話の、もうひとつの「ミソ」は、マーケティングにおけるクリエイティビティは、ほとんどの場合、ターゲット=お客さんへの贈り物と考えることができるから、です。
 次は、そのあたりのお話をします。