2.すんごくおいしい
どうでもいいような製品改良や役に立たない思いつきを正当化したり、流通に「新しい」とか「ちょっと違う」と言って扱ってもらうためだけの言い訳だったり。
どうもこの「差別化」ということば、いいように使われているようです(「付加価値」も同じ)。
だからこそ、使うな、と言ってるわけですが、そもそもなんでなんだろう?本来、とても大切な、マーケティングの基礎的な概念なのに、どうしてこういう使われ方をするようになってしまっているんだろう?と、今日はそのあたりの「思いつき」を。
思いついたのは、ふたつ。
①差別化だからといって、違うものを
提供している必要はない。
②差別化って、別に製品機能や
パフォーマンスだけでやらない
といけないものではない。
で、このセクションでは、まず、前者について。
「すごい」も「差別化」
どうも、それは日本語という言語に根差している気がするんですが、ご存じのとおり、日本語は「比較」・「優劣」を端的に表現することが苦手です。
「Higher」ということばは、それ自体が「比較級」と呼ばれ、「X is higher than Y」という、他と比較してより高いことを示すんですが、これが日本語には無い。「高いer」という単語は存在しないわけです。「XはYより高い」と、文脈で伝えないといけない。
「Superior」というのも、ちゃんと訳せません。通常「優れた」と訳しますが、そこには比較のニュアンスは無いので、同じく「XはYより優れている」と説明しないと伝わりません。
ことばが無い、ということは、その概念が存在していない、ということ。
そこで英語からの輸入品である「差別化」という概念を運用しようとすると、「Better=あるベネフィットにおいて、他よりも優れている」を差別化として意識できず、ついつい「他が持っていない別のモノを持っている・提供できる」に流れてしまう。
間違いではないんですよ、もちろん。世の中、たっくさんあります。
ただ、そのカテゴリで買ってもらうために何よりも大切なベネフィットがあったとき、それから「逃げる」ことにつながってしまう。本来は、Better、あるいは少なくとも「同じように良い」を目指さないといけないのに、そのポイントで評判や信頼を築かないといけないのに、「それ以外」にリソースをつぎ込んでしまうことになる。
そしてやがて、ためにする差別化の連鎖が起こり、気づいたら「なんでもできるけど、特にいいところもない」、「余分な機能がたくさんついてるけど、大事なことがちゃんとできるのかよくわからない」、「奇をてらってるだけで、使いにくい」、「すごいとがってるけど、絶対メジャーにならない」…ものに成り果てて、「あたりまえのことがちゃんとできる」競合が出てきて、あれよあれよと負けていく。
差別化は大事だけど、だからといって、常に「他と違うもの」を提供しないといけないわけではない。
「食べ物はおいしいから食べる」原則、です。
「おいしいだけじゃなく…」に逃げる前に、「すんごくおいしい」に取り組んでみるのが正解だし、実はそれこそが差別化なんですわ。
「Yはおいしいだけですが、Xはすんごくおいしい。」
素晴らしい差別化です。
でも、製品やサービスの主要ベネフィットにおいて、いつもBetterとは限らない、のが悩みですよね。なので、次に、
②「差別化って、別に製品機能やパフォーマンスだけでやらないといけないものではない」について書きます。